家づくりのご相談を受ける中で、
「高断熱住宅にすると、実際の電気代はどのくらいになるのでしょうか?」
というご質問をいただくことがあります。
もちろん、家族構成や暮らし方によって違いはあります。
それでも、
実際に住まわれている方のデータは、これから家づくりを考える方にとって大きな参考になるはずです。
今回は、弊所で設計監理を行った 「千葉・検見川の住まい」 お施主様より、
入居後1年間の電力収支データをご提供いただきましたので、ご紹介します。
まずは結果から
2025年2月から2026年1月までの1年間。
売電収入と購入電力料金を集計した結果がこちらです。

集計結果は、
- 売電収入 143,504円
- 購入電力 143,524円
差額はわずか20円。
1年間の電力収支は、ほぼ ±0 という結果でした。
設計時の計算ではなく、実際の暮らしの中でこの結果になったことに価値を感じます。
もちろん、電気を全く使っていないわけではありません。
購入した電気もありますし、太陽光発電による売電収入もあります。
その両方を合計した結果、年間収支がほぼゼロになったということです。
『千葉・検見川の住まい』の建物性能
今回のお住まいは、千葉県内に建つ木造2階建ての長期優良住宅です。
建物概要
- 延床面積 107.35㎡
- 長期優良住宅
性能
- 断熱等級6 UA値 0.33W/㎡K
- 耐震等級3(許容応力度計算)
- C値 0.68
設備
- 暖房用エアコン1台
- 冷房用エアコン1台
- ダクトレス第3種換気
- おひさまエコキュート
- 太陽光発電 10.88kW
暖房用エアコン1台、冷房用エアコン1台というシンプルな構成です。
特別な全館空調などは採用していません。
冬は赤字、春から秋は黒字
月ごとの収支を見ると、
2月、3月、11月、12月、1月は赤字となっています。
一方で、4月から10月までは黒字です。
冬は、暖房による消費電力が増えます。
加えて、お湯を使う量も増える傾向にあります。
また、日照時間も短くなるため、太陽光発電量も減少します。
反対に春から秋は発電量が増え、
売電収入が電気料金を上回る結果となっています。
季節ごとの変化が分かるのも、実測データならではの面白さです。
おひさまエコキュートを採用しています
『検見川の住まい』では、給湯設備として「おひさまエコキュート」を採用しています。
従来のエコキュートは、夜間の安い電気を利用してお湯をつくる考え方でした。
一方、おひさまエコキュートは、昼間に太陽光発電でつくった電気を利用してお湯を沸かします。
近年は売電価格が下がる一方で、電気料金は上昇傾向にあります。
そのため、
「発電した電気を売る」
よりも、
「発電した電気を自宅で使う」方が有利なケースが増えています。
それらを踏まえ、「検見川の住まい」では、自家消費を増やすことを意識して設備計画を行いました。
太陽光発電は10年後も意味があるのか
「検見川の住まい」では、
住宅用太陽光発電の固定価格買取制度(通称:FIT(Feed-in Tariff)制度)を利用しています。
FIT制度とは、太陽光発電でつくった電気を一定期間、固定価格で買い取ってもらえる制度です。
FITについて詳しくは、こちら。
現在は比較的高い売電価格が設定されていますが、10年後には買取価格が下がります。
すると、
「太陽光発電のメリットもなくなるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、私はそうは考えていません。
近年は、
- 売電価格は下がる。
- 電気料金は上がる。
という流れが続いています。
そのため今後は、
発電した電気を売る設備ではなく、
発電した電気を自宅で活用する設備としての価値がさらに高まっていくと考えています。
おひさまエコキュートも、その考え方のひとつです。
将来の電気自動車も見据えています
今年4月下旬、お施主様より、
電気自動車への買い替えに伴い、充電用コンセントを設置する工事を予定している旨のご連絡をいただきました。
そして、先日、
「電気自動車用充電設備の補助金申請が受理されました。」
とのうれしいご報告もいただきました。
検見川の住まい では新築時、将来の電気自動車導入を見据え、
充電コンセント用の配線をあらかじめ施工していました。
当時は電気自動車を所有されていませんでしたが、
後から工事がしやすいよう、配線だけを先行して準備していたものです。
住宅は数十年先まで使う建物です。
一方で、自動車や設備は時代とともに変化していきます。
だからこそ、
今必要なものだけでなく、
将来の暮らしの変化も見据えながら計画することが大切だと改めて実感しました。
電気は「売る」から「使う」へ
これからの太陽光発電は、
売電収入を得るための設備というより、
エネルギーを自給するための設備になっていくのかもしれません。
- 昼間に発電した電気でお湯をつくる。
- 昼間に発電した電気で電気自動車を充電する。
- 電気自動車に蓄えた電気を家で使う。(V2H)
- 昼間に発電した電気を蓄電池に貯め、夜に利用する。
そうした仕組みが整うことで、電力会社から購入する電気を減らすことができます。
お施主様から学ばせていただいたこと
今回ご紹介した電力収支の集計もそうですが、
『電気自動車用充電設備の補助金申請』も、お施主様ご自身で手続きを進められました。
制度を調べ、
必要書類を集め、
申請を行う。
決して簡単な作業ではありません。
新しいことに積極的に挑戦される姿勢に、私自身も大いに刺激をいただきました。
良い家づくりは、設計者だけではできない
家づくりは、建物が完成したら終わりではありません。
住まい手が暮らしに関心を持ち、
学び、
工夫を重ねることで、
家は少しずつ、そのご家族らしい住まいになっていきます。
検見川の住まい のお施主様は、
光熱費を記録し、
補助金制度を調べ、
住まいをより良く活用するために行動されています。
その姿勢には、私自身も学ばせていただくことが多くあります。
数字以上に価値があること
私が今回の結果で興味深いと感じたのは、
収支がゼロだったことだけではありません。
無理なく快適に暮らしながら、この結果だったことです。
夏は涼しく、
冬は暖かい。
無理に我慢するのではなく、
普通に暮らした結果として光熱費を抑えられている。
そこに住宅性能の価値があると思います。
家づくりでは、どうしても建築費に目が向きがちです。
しかし、本当に長い付き合いになるのは、完成した後の暮らしです。
今回のデータは、特別な実験結果ではありません。
実際に暮らしているご家族の、ありのままの1年間です。
これから家づくりを考える方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
実際の暮らしを見ていただけます
今回ご紹介した電力収支のデータは、実際に住まわれているご家族の1年間の記録です。
住宅性能や光熱費は、数値だけではなかなか実感しにくいものです。
- 冬の暖かさ
- 夏の涼しさ
- エアコンの使い方
- 室内の空気感
- 暮らしやすい動線
そうしたものは、実際の住まいを体験することで初めて見えてくる部分があります。
弊所では、
私の自邸を公開する「自邸|暮らしの見学会」を開催しています。
完成直後の住宅展示場ではなく、実際に生活している住まいです。
良い部分だけでなく、暮らしてみて分かったことも含めて、率直にお話ししています。
おわりに
今回ご紹介したのは、おひさまエコキュートを採用した住宅の実測データです。
一方、私の自邸ではガス給湯を採用しています。
同じ高断熱住宅であっても、設備の選択によって光熱費の傾向やエネルギーの使い方は変わってきます。
現在、自邸のデータも継続して記録していますので、
一定期間の集計ができましたら、こちらもあらためてご紹介したいと思います。
住宅の性能や設備は、カタログや計算だけでは見えてこない部分があります。
だからこそ、
実際に住んだ結果や、お施主様からいただく生の声を大切にしながら、
これからの家づくりに活かしていきたいと思います。
タイラヤスヒロ建築設計事務所の家づくり
千葉県で注文住宅を検討されている方へ。
暮らしをつくる家、家をつくる想い
- 断熱等級6(UA値0.46~|HEAT20 G2~G3水準)
- 耐震等級3(許容応力度設計)
- C値0.7以下(気密性能/中間測定時)
- 長期優良住宅対応
- 一次エネルギー消費量等級6/ZEH(GX ZEHなど)対応可/BELS評価対応可
- 高耐久仕様
- 自然素材の活用
- 日本の職人さんによる確かな手仕事を活かす家づくり
- 小さな家でも快適に暮らせる設計
冬は、太陽のあたたかさを静かに抱き込む家。
夏は、庇や窓の設計が光を整え、心地よい影をつくる家。
そんな “自然の力(パッシブデザイン)” を大切にしながら、
耐震・断熱・気密・通風・日射コントロールといった性能を磨き、
さらに光熱費や維持管理費(ランニングコスト削減)など、暮らしの先々まで見据えた
“住まい全体の最適化” を行っています。
そこに欠かせないのが、
日本の職人さんが手をかけてつくる、確かで美しい仕事です。
自然素材が持つ表情や触り心地を生かしながら、
細部に宿る手仕事の積み重ねが、住まいの寿命と豊かさを支えています。
日々の暮らしが快適で、心と体に無理がなく、
十年後も、二十年後も「この家にしてよかった」と思えること。
それが、私の考える “当たり前の性能” であり、住まいづくりの “揺るぎない想い” です。


