気密性能をなぜ重視するのか。
―それは、26坪でも広く、快適に暮らすための、静かな土台だから。
私の自邸は、26坪です。
決して広くはありません。
でも、訪れた方の多くが「思っていたより広く感じる」とおっしゃいます。
それは、おしゃれな内装のせいではありません。
構造と性能と空間が、ひとつながりに設計されているからです。
気密が「目的」ではありません。
気密はひとつの「手段」です。
私の目指す家づくりは、その手段のつながりなのです。
気密の話をする前に、まずその「つながり」からお話しします。
1. 空間を細かく仕切らない、ということ
小さな家を広く感じさせる最初の一手は、「仕切らないこと」です。
壁が少ないほど視線が抜け、空間に連続性が生まれます。
リビングからダイニング、階段、吹き抜けへと視線がつながると、26坪という数字を体感として感じなくなります。
ただし、ただ壁を減らせばいいわけではありません。
耐震等級3を許容応力度設計で取得するためには、
構造上の壁をどこに配置するかを、最初から丁寧に計画する必要があります。
「開放的にしたいから壁を抜く」ではなく、「構造的に無理のない位置を見定め、可能な範囲で、大胆に開く」という順番で設計します。
2. 吹き抜けと、天井の変化
視線の抜けは、水平方向だけではありません。
吹き抜けをつくることで、視線は上へも抜けます。
それだけで、体が感じる空間のスケールは大きく変わります。
さらに私の設計では、天井の高さを一定にしません。
低く抑えた天井と、勾配をつけた天井を意図的に組み合わせます。
低いところを通って高いところへ出たとき、人は空間の広がりをより強く感じます。
単調でない天井は、小さな家に「奥行き」を与えます。
勾配天井は、気積(室内の空気の体積)を増やし、空間に流れを生みます。
これが、次の話につながります。
3. エアコン2台で、家全体を整える
私の自邸では、エアコンを夏用1台・冬用1台、合計2台で家全体の空調を計画しています。
「たった2台で?」と思われるかもしれません。
これが成立する条件は、三つあります。
断熱性能の強化、気密性能の確保、そして、空間構成の工夫です。
断熱性能が高ければ、外の暑さ・寒さが室内に入り込みにくくなります。
気密性能が高ければ、せっかく整えた空気が隙間から逃げません。
そして空間構成の工夫により、壁を仕切らず空間を適切に繋げることで、
空調された空気が家中に自然と広がります。
吹き抜けや勾配天井で増えた気積から、空調された空気がスムーズに移動します。
空気の流れに、無理がありません。
構造計画を無理なく成立させることができているから、空調の経路も素直になります。
すべてがつながっているのです。
4. 気密性能は、目的ではない
気密性能を表す「C値」という数字があります。
家全体の隙間の合計を、床面積で割ったものです。
弊所では、C値0.7以下を基準としています。
26坪の家で言えば、すべての隙間を合わせてもはがき1枚以下に収まるイメージです。
ただ、C値を下げることが目標ではありません。
快適に、無理なく暮らせる住環境をつくること。それが目標です。
気密性能は、そのための静かな土台のひとつにすぎません。
「隙間が少ない家は息苦しいのでは?」と考える方もいます。
でも気密と換気は別の話です。
私の設計する家には(現行の建築法に則った家であれば皆)、計画換気が存在し、機能しています。
新鮮な空気は、意図した経路をきちんと流れています。
気密が低いと、換気さえも計画通りに動きません。
隙間から空気が勝手に出入りして、冬には壁の中で結露が起き、見えないところで家が傷んでいきます。
5. 26坪が、広く感じられる理由
整理すると、
どれかひとつだけ突出させても、うまくいきません。
すべてが連動して、はじめて「26坪なのに広い」「光熱費が気にならない」「冬の朝/夏の日中が楽」という暮らしが生まれます。
数値で守り、手仕事で仕上げる。
その先に、月日が経つほど愛着が深まる家があると、私は考えています。
まず、体で感じてみてください。
ここまで書いてきたことは、図面や数字では伝えきれません。
実際にその場に立って、空気を感じて、はじめて「ああ、こういうことか」と腑に落ちるものだと思っています。
弊所では毎月、自邸である「星久喜の住まいⅡ」で開催する『暮らしの見学会』を、3組限定でご案内しています。
26坪の家が、なぜ広く感じられるのか。
エアコン2台で、本当に家全体が整うのか。
数値ではなく、体感として確かめていただける場所です。
また、家づくりをまだ漠然と考えている段階でも、住まいの個別相談会 を随時お受けしています。
何から始めればいいか分からない方ほど、歓迎しています。