わが家には、毎日健気に床を掃除してくれる、小さなロボットがいます。
彼 - あえてそう呼びたくなるほど愛着が湧いている存在です。
その動きをじっと眺めていると、時々、少しハラハラする、でもどこか微笑ましい光景に出会います。
妻の妊娠をきっかけに、わが家へやってきた相棒
そもそも、このお掃除ロボットを購入したきっかけは、
以前のマンション暮らしの頃、妻が妊娠したことでした。
少しでも家事負担を減らせればと思い、わが家へ迎え入れたのです。
……「いや、まずは自分で掃除機を掛ければ?」という至極もっともなツッコミは、ひとまず置いておいて。
実際に使い始めると、その便利さに驚きました。
床がきれいに保たれているだけで、暮らしの快適さは大きく変わります。
そして何より、“掃除をしなければ”という小さな精神的負担が軽くなるのです。
ただ、以前住んでいたマンションでは、正直なところ、大活躍!とまではいきませんでした...
マンション時代、お掃除ロボットが活躍できなかった理由
以前の住まいは、今よりコンパクトなマンションでした。
床には家具や物が多く置かれ、部屋と部屋との境は開き戸。
すると、お掃除ロボットが自由に動ける範囲は思った以上に限られてしまいます。
椅子の脚の間で止まる。
扉が閉まっていて別の部屋へ行けない。
開き戸の裏側が掃除できない。
家具の周囲に細かなデッドスペースが残る。
せっかく導入したのに、
「結局、自分で掃除機を掛けた方が早い」という場面も少なくありませんでした。
もちろん、ロボットが悪いわけではありません。
単純に、“家の構成”と相性が良くなかったのです。
この経験は、住まいを設計する立場として、とても印象に残っています。
吹き抜けの格子手摺で起きる、小さなドラマ
そして現在のわが家。
2階の吹き抜けに面した「格子手摺」のそばを掃除するとき、毎回ちょっとしたドラマが起こります。

わが家の手摺は、すっきりとした木の格子でデザインされています。
そして、その格子の間隔が、ちょうどお掃除ロボットの体にぴったり収まる幅なのです。

ロボットは迷うことなく、その隙間へすっと入り込んでいきます。
初めて見る方は、きっと「あぶない、落ちてしまう!」と声を上げるでしょう。
けれど、ロボットは格子の向こうが吹き抜け - つまり床のない空間であることを、センサーできちんと認識しています。
段差を察知すると、その狭い格子からゆっくりとバックし、くるりと向きを変え、何事もなかったように掃除を続けるのです。
「落ちそうで…、落ちない」
その見事な動きを見るたびに、私はいつも小さく微笑んでしまいます。
家電が“ちゃんと活躍できる家”かどうか
現代の家づくりにおいて、お掃除ロボットのような便利な家電は、暮らしを支える大切な相棒です。
せっかくの優れた道具が、家の設計のせいで実力を発揮できないとしたら…
それは、とてももったいないことだと思います。
段差に引っかかる。
家具の隙間に入れない。
コンセント位置が悪い。
動線が複雑で使いづらい。
そうした小さなストレスは、毎日の暮らしの中で少しずつ積み重なっていきます。
だからこそ私たちは、見た目の美しさだけではなく、
「暮らしの道具が自然に機能すること」も、丁寧に設計したいと考えています。
“引き戸中心”という考え方
わが家は玄関ドア以外、すべての部屋を、引き戸で構成しています。
お掃除ロボットにとって、開き戸は意外と大きな障害になります。
扉が半開きになっていると進めなかったり、部屋ごとに掃除が途切れてしまったりすることも少なくありません。
その点、引き戸であれば、扉の開閉によって動線を塞ぐことがなく、ロボットも家じゅうを自然に行き来できます。

もちろん、その便利さは人にとっても同じです。
開閉時に扉の軌道を気にしなくてよい。
家具配置の自由度が高い。
空間同士がゆるやかにつながる。
引き戸には、暮らしの中の小さなストレスを減らしてくれる力があります。
また、「床に物を置きすぎない」ということも、実際に暮らしてみると非常に大切でした。
ロボットがスムーズに動けるということは、
人にとっても片付けやすく、掃除しやすい空間だということでもあります。
私の設計する住宅でも、こうした「日常動作の滑らかさ」をとても大切にしています。
ただし、すべてを無理に引き戸へ統一するわけではありません。
構造的な条件や耐力壁との関係、間取り上の制約、あるいは気密性や納まりのバランスによっては、開き戸の方が合理的なケースもあります。
大切なのは、「引き戸か、開き戸か」という形式そのものではなく、
その住まいにとって何が最も自然で、ストレスなく暮らせるかを丁寧に見極めることだと考えています。
性能だけでは、“心地よい家”にはならない
家づくりを考えるとき、どうしても「耐震性」や「断熱性能」といった、数値化できる性能に意識が向きがちです。
もちろん、私の事務所でも、
- 地震に強いこと
- 冬あたたかく、夏涼しいこと
- 長く安心して暮らせること
これらは高い水準で当たり前に実現しています。
それは、建築家/設計者としての最低限の責任だからです。
けれど、本当に大切なのは、その先にある暮らしではないでしょうか。
頑丈で快適な箱をつくるだけではなく、
その中で「どれだけストレスなく、豊かな時間が流れるか」
そこに、住まいの本当の価値があるように思います。
“ゆとり”を設計するということ
お掃除ロボットが、家じゅうを引っかかることなく掃除してくれる。
そのおかげで、週末に掃除へ追われる時間が減る。
生まれた余白の時間で、お気に入りの椅子に腰掛けながら、吹き抜けから差し込む柔らかな光を眺める。
ゆっくり珈琲を淹れ、家族と穏やかに過ごす。
私たちが本当に設計すべきことは、形としての建物そのものというより、
そんな「住む人の心に生まれるゆとり」なのかもしれません。
住む人が普段は意識しないほど自然に、
でも確実に、日々のストレスを取り除いていく細やかな工夫。
それこそが、私たちが大切にしている“丁寧な設計”の正体です。
暮らしは、図面だけでは分からない
こうした話は、図面や写真だけでは、なかなか伝わりません。
お掃除ロボットが自然に動き回る感覚。
引き戸による空間のつながり。
吹き抜けの空気感。
床に物を置きにくくなることで生まれる整った暮らし。
冬の暖かさや、夏の静かな涼しさ。
それらは、実際にその場へ立ってみて、初めて身体で理解できるものだと思っています。
タイラヤスヒロ建築設計事務所では、
設計者である私自身が家族と暮らしている自邸にて、「暮らしの見学会」を定期的に行っています。
完成直後の“展示用の住宅”ではなく、
実際に生活している住まいだからこそ、見えてくることがあります。
営業的なお話ではなく、
まずは一緒に、「どんな暮らしをしたいのか」を整理する時間になればと思っています。
暮らしの時間を、美しく整えるために
わが家の小さなお掃除ロボットは、今日も格子の隙間でくるりと向きを変えながら、静かに働いてくれています。
「あとは頼んだよ」
そう声をかけながら、私は今日も図面に向かいます。
みなさんは、新しい住まいで、どんな時間を過ごしたいですか。
ネットでは分からない「空気感」
家づくりに、唯一の正解はありません。
家づくりは、
情報を集めれば集めるほど、
何を信じればいいのか分からなくなることがあります。
- 断熱性能
- 気密性能
- 耐震性能
- 設備機器
もちろん大切です。
ただ、
実際の暮らしや、
空気感、
動線の感覚は、
現地でしか分からない部分も多いと思っています。
もし、
「自分たちに合う家って何だろう」
と考えている方は、
我が家が何かの参考になるかもしれません。
基準の発見|自邸だからこそ分かること
暮らしの見学会で「自分にとっての基準」を確かめてください。
この見学会は、
モデルハウスのように、
綺麗に整えられた空間を体感する場ではありません。
実際に暮らしている家だからこそ分かることを
体感していただく場です。
タイラヤスヒロ建築設計事務所の家づくり
千葉県で注文住宅を検討されている方へ。
暮らしをつくる家、家をつくる想い
- 断熱等級6(UA値0.46~|HEAT20 G2~G3水準)
- 耐震等級3(許容応力度設計)
- C値0.7以下(気密性能/中間測定時)
- 長期優良住宅対応
- 一次エネルギー消費量等級6/ZEH(GX ZEHなど)対応可/BELS評価対応可
- 高耐久仕様
- 自然素材の活用
- 日本の職人さんによる確かな手仕事を活かす家づくり
- 小さな家でも快適に暮らせる設計
冬は、太陽のあたたかさを静かに抱き込む家。
夏は、庇や窓の設計が光を整え、心地よい影をつくる家。
そんな “自然の力(パッシブデザイン)” を大切にしながら、
耐震・断熱・気密・通風・日射コントロールといった性能を磨き、
さらに光熱費や維持管理費(ランニングコスト削減)など、暮らしの先々まで見据えた
“住まい全体の最適化” を行っています。
そこに欠かせないのが、
日本の職人さんが手をかけてつくる、確かで美しい仕事です。
自然素材が持つ表情や触り心地を生かしながら、
細部に宿る手仕事の積み重ねが、住まいの寿命と豊かさを支えています。
日々の暮らしが快適で、心と体に無理がなく、
十年後も、二十年後も「この家にしてよかった」と思えること。
それが、私の考える “当たり前の性能” であり、住まいづくりの “揺るぎない想い” です。